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クリスタルに描かれた記憶

2008. . 25
s-2004-12-04 012

NYで「老年学」を学んだことによって、様々な高齢者との出会いがあった。
わたしの何倍もの年月を生き抜いてきた彼らには、それぞれの人生の物語があった。

その物語一つ一つが本当に奥深いものだったのだけれど、特に彼女のことは忘れることができない。

日系アメリカ人として、二つの国のはざまで翻弄されながらもこれまで生き抜いてきた彼女は、外見も中身も美しい女性だった。

わたしはそんな彼女が本当に好きだった。

彼女はアメリカで生まれ育ち、10代で日本に移り住んだ。彼女は言う。
「わたしと姉がね、英語でしゃべってると、まわりの日本人がわたしたちをおかしな目でみるのよ。母からは、英語をしゃべったらダメよ!とよく叱られたものだったわ。」

そんな彼女はほどなくして、「東京大空襲」を体験する。とても凄まじい光景だったという。
「わたし、腐った鳥の肉のにおいを嗅ぐと吐いちゃうの。そのにおいが、あの時の人の焼けたにおいににているから・・・。。。」

その後、焼け野原となった東京で、彼女は「英語の堪能な日本人」としての新たな生活をスタートさせることになるのだけれど、「アメリカ人」にも「日本人」にもそまりきれない彼女は、語りつくせない辛酸をなめたことだろう。

「結局、アメリカに戻ってきちゃったの。」と笑いながら言った。

気さくで優しくて美しい彼女にはパートナーがいなかった。それがとても不思議だったわたしは、そのことについて尋ねたことがあった。

そこにはまた、辛く悲しい過去が隠されていた。

「いい人はいたのよ。でもね、死んじゃったの、その人。わたしと一緒にいる時に心臓発作をおこして倒れたの。わたしの目の前で・・・そしてそのまま亡くなったわ。彼の家族や親戚は一緒にいたわたしを責めたの。わたしがもっとなんとかしていれば、彼は死ななくてすんだって。
それ以来、もうパートナーはもたないって決めたの。」

遠くを見つめ、辛い過去を語ってくれた彼女の瞳は、どこか孤独をおびていて、とてもせつなかった。

「時々ね、17階からNYの景色を眺めていると、このまま飛び降りてしまいたいって思う時があるのよ。でもそんな気分の時は、なるべく部屋の外に出ていろんな人と話すようにしているの。そうすると気が紛れるから・・・」

いつも精一杯明るくふるまおうとしている彼女の中には、取り除くことができない闇が潜んでいる。

「生きる」ってなんて悲しいことなんだろう・・・

それでも、そんな「生」を全うしてきた彼女だからこそ、えられた「輝き」がきっとあるはず。

だって、彼女と過ごした時間の中で、わたしは彼女の溢れんばかりの優しさや温かさをいっぱい感じることができたのだから・・・

彼女と別れる時、「NYをいつでも思い出せるように・・・」と彼女がわたしにくれた、マンハッタンを中心に描いたクリスタル―今でも、わたしの部屋に大切に飾られている。


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